海外ポスドクの薦め

アメリカ生活の予備知識

企業駐在員の場合は、諸手続に通訳が立ち会うなど会社が生活全般の面倒を見てくれるのに対し、ポスドクは海外での生活を自力で立ち上げる必要がある。 渡航前はビザの手続き,渡航後は大学関係の手続きなど,PIや受入先大学の事務の人とコミュニケーションしながら適切に処理しなければならない. また,生活の立ち上げには,アパートの選定と入居,家具,車の購入,銀行口座の開設などを手探りで進めることとなる. どの場面でも,語学力はもとより関係する人に自ら働きかけていく積極性が重要だ.

ここでは,ポスドクが特にアメリカ研究生活を円滑に立ち上げるために、渡米前の諸手続き、渡米後の生活情報など知っておきたい予備知識をまとめて紹介したい。

渡航前にまずJ-1ビザを取得する。受け入れ先大学からDS-2019フォームを郵送してもらう.DS-2019は大学がポスドクとして一定期間雇用することを証明するもので,それに基づいて米国大使館にビザ申請を行う。 大学の事務処理など相応に時間がかかるので、できれば渡航半年前くらいから準備を始めると安心である。アメリカ渡航後は、まず現地の Social Security Office で Social Security Number(SSN)を取得し、次に銀行口座を開設する。アパートは渡航前にSupervisorに相談した上で手配しておく。

 生活にはスーパーなどでの買い物を含めて車が必須である。渡航前に国際免許証を取得しておくとよい。国際免許証の有効期間は1年であるが、居住者に州の免許取得が義務づけられている州もある。必要に応じて現地 DMV(Department of Motor Vehicles)で筆記、実技試験をうけて免許を取得する。その際、細かな交通規則が日本と違うので注意する。実技は、アメリカ人や現地在住日本人に助手席から指導してもらう、筆記は過去問を解くなどして対策するといい。車はディーラーから買ってもいいが、短期滞在であれば、大学の掲示板などに貼られたMoving Saleの宣伝や、Craigslistなどを通じて中古車を個人から買うのもありだ。なお、新車、中古車の参考価格は Kelly Blue Book にあるので、購入検討の際、判断材料にする。

食事については、食材は日本より安いが外食は割高である。日本食材は大都市圏ではミツワ、マルカイ、ニジヤなどの大型日系スーパー、他の地域では中国、韓国系のスーパーで調達する。その他食材は Costco (日本での発音、表記はコストコだが、アメリカでの発音はコスコ)などの会員制スーパーでまとめ買いすると安くなる場合がある。

居住費は、不動産バブルの影響で特にニューヨーク市、ボストン市やカリフォルニア州で高い。ロサンゼルスの南70キロに位置するIrvineでは、標準的な1ベッドルームアパートメントで(2007年当時)月1300ドルからである。 アパートはUnfurnished(家具なし)が一般的なので、家具は、Moving Sale などを利用して手に入れるか、または大型量販店 Walmart、Target、Ikea などから購入するのが一般的だ。

 最後に余暇の過ごし方について。研究室の仲間達とBBQやパーティー、バレーボールなどを楽しむことが多い。 また、大きな大学には日本人研究者のコミュニティーがあるので、すでにFacultyになっている諸先輩方や同じポスドク仲間と交流することは非常に有益であり、励みになる.

アメリカは西海岸にはヨセミテやグランドキャニオンなどの雄大な自然が、東海岸には、ニューヨーク、ボストンなど歴史的文化的に魅力的な町があり、自然や文化を満喫するのもいい。家族でビーチに出かけたり、砂漠や山でトレッキングを楽しんだりしている。研究室の引越の際は、東海岸のRochesterから西海岸のIrvineまで同僚たちと車で大陸横断した。途中イエローストーンなどに立ち寄りながらの10日間のドライブはとてもよい思い出である。